3DCADパソコンのグラフィックボードの選び方

3DCAD初心者向けにグラフィックボードの選び方を解説

3DCADパソコンのグラフィックボードの選び方

こんなことが知りたい

3DCADのグラフィックスボードは何を選べばいい?

ゲーム用グラフィックボードでもいい?

ここでは、 3DCAD向けのグラフィックボードを探している方に向けて 「3DCADに適切なグラフィックボードの選び方」 を解説しています。

「どのような種類のグラフィックボードを選べばいい?」 「ゲーム用のグラフィックボードではダメ?」 「どのようなパソコンとセットで買えばいい?」 「GPUメモリの目安は?」といった、 初心者が気になることをピックアップして できるだけ丁寧に説明していきます。

グラフィックボードの選択を間違えてしまうと 仕事のパフォーマンスにも大きく影響してしまいます。

ここでは、3DCAD向けのグラフィックボードの基礎知識も含めて 説明していきますので、 パソコン購入前に一読していただけるとうれしいです。

あなたの 「失敗しないグラフィックボード選び」のお役に立てれば幸いです。

この記事を書いた人

自分
さくら

  • 3DCADサポートエンジニア
  • サポート歴7年
  • Autodeskとダッソー製品のカスタマーサポートに従事

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目次

グラフィックボードの選び方

3DCADを快適に動かすためには プロ向けのグラフィックボードを選ぶ必要があります。

そのためには、 次の3つの項目に注目することで 失敗しないグラフィックボード選びができます。

  • CPU内蔵グラフィックスは選ばない
  • NVIDIAかAMDを選ぶ
  • 認定グラフィックスはおすすめ

CPU内蔵グラフィックスとは、 グラフィックボードの機能をCPU内部で補う仕組みです。 3D表示はあまり得意ではないので、できるだけCPU内蔵グラフィックスは避けます。

グラフィックボードのメーカーは NVIDIAもしくはAMDが実績もあるためおすすめです。

3DCADには認定グラフィックスという動作検証済みのグラフィックボードが ある場合もあります。 認定グラフィックスを選ぶことで「不具合リスク」を減らすことができます。

各項目についてもう少し詳しく説明していきます。

CPU内蔵グラフィックスは選ばない

一般的な家庭用パソコンや企業オフィス向けに普及しているパソコンでは、 CPUに内蔵されたグラフィック機能を使って3D表示や動画表示を行っています。 よく「CPU内蔵グラフィックス」と呼ばれることが多く、安価なのが特長です。

このCPU内蔵グラフィックスは、 多くの3DCADで推奨されていません。

その理由は CPU内蔵グラフィックスは3D表示機能が得意ではないため 3DCADが快適に動かないリスクがあるためです。

例えば、AutodeskのAutoCADでは以前、 インテルのCPU内蔵グラフィックスであるIris Xe搭載のパソコンを使うと 「線が適切に表示されない」「頻繁にフリーズする」などの不具合が報告されました。

Intel Iris XeのAutoCADでは、線の太さは表示されません・Autodesk公式

Intel Iris Xe グラフィックス デバイスで、AutoCAD が頻繁にクラッシュまたはフリーズする・Autodesk公式

解決策としてAutoCADのバージョンを上げたり、 グラフィックドライバーを更新すれば改善されますが、 CPU内蔵グラフィックスはどうしても不具合リスクが高いのが現状です。

トラブルシュートにはとても時間がかかりますし、なにより知識も必要です。 このようなリスクを極力減らすために CPU内蔵グラフィックスを選ばないことをおすすめします。

NVIDIAかAMDを選ぶ

2つ目は「NVIDIAもしくはAMDのグラフィックボードを選ぶ」です。

3DCADではプロ向けの専用グラフィックボードが適切ですが、 それを扱うメーカーとして「NVIDIA」と「AMD」があります。 NVIDAとAMDは 3DCADメーカーと連携しながらグラフィックボードを開発しているのが特長です。

NVIDIA、AMDを選ぶ理由は、 3DCADでの3D表示機能で不具合が少なく安定して動くためです。 なぜ安定して動くのかというと、 3DCADメーカーとグラフィックボードメーカー同士が 協業しながら開発をしているためです。

例えば、3DCADメーカーは新しいバージョンのリリース前に 動作テストをして不具合があった場合は グラフィックボードメーカーに連絡をして修正をしてもらうこともあります。

NVIDIAのサイトにはドライバーのアップデート履歴が見れますが、 そこでは特定のCADソフトの修正などもリストに載っていたりします。 これは、協業しながら動作の安定性を求めて開発しているためです。

こういう安定性と実績の観点から見ても NVIDIAかAMDを選ぶのがおすすめです。

ちなみに、 NVIDIA、AMDともに3DCADに最適な製品群があります。

3DCADに最適なおすすめのグラフィックボード は、NVIDIA、AMDともに複数種類あるので このあと、もう少し詳しく説明していきます。

NVIDIA

NVIDIAのロゴ

NVIDIAは世界のグラフィックボードのシェア率が最も高いメーカーです。 特長的なのは、CUDAと呼ばれるGPUを使った並列計算機能です。 大手CADメーカーはCUDAを使った高速3D処理をする機能を搭載していることが多く、 その機能を使うためにNVIDIAを選ぶ人も多いです。

さて、3DCADで向いているNVIDIAのグラフィックボードの種類は 次の通りです。

  • NVIDIA Tシリーズ
  • NVIDIA RTX Aシリーズ
  • NVIDIA RTX Adaシリーズ

これらシリーズの特長は、 3D表示の正確性を重視したグラフィックボードになっています。 例えば、高い3次元位置精度で表示したり、 色の再現性を高めたり、 3DCAD設計で重要な部分に力を入れて開発しています。

Tシリーズは比較的安価なグラフィックボードで 中小規模のCAD設計をする人に向いています。

Tシリーズのグラフィックボードを採用しているパソコンも多く、 機械系、建築系の学生から企業の設計者まで 幅広い層で使われています。

RTX AシリーズとAdaシリーズはハイエンド向けのグラフィックボードです。

中規模以上の設計をする方に向いています。 例えば、建築であればマンションの設計をする方や 機械系であれば自動車や重機の設計をする方に向いています。

パソコンもワークステーションで採用されることが多く 価格も高額です。

AMD

AMDのグラフィックボード

AMDはグラフィックボードとCPUを開発しているメーカーです。 NVIDIAよりも世界シェアは劣りますが、 多くのパソコンでAMDのグラフィックボードとCPUを採用しています。

特長的なのは、価格をおさえてハイスペックなグラフィックボードを購入できるところです。 NVIDIAの同じ価格帯のグラフィックボードと比べて、 AMDのグラフィックボードの方が速いこともあります。 つまり、コストパフォーマンスが高いグラフィックボードなのです。

さて、3DCADで向いているAMDのグラフィックボードの種類は 次の通りです。

  • RadeonPro W6000シリーズ
  • RadeonPro W7000シリーズ

W6000シリーズはひと世代前の技術で作られたグラフィックボードです。 しかし、価格が安いため、まだW6000シリーズを採用しているパソコンも多いのが現状です。

W7000シリーズはローエンドからハイエンドまで 幅広い層に向けた製品を複数リリースしています。

具体的にはW7500、W7600、W7700、W7800、W7900といった製品がありますが、 それぞれグレードが違います。 数字の若いほうがローエンドで数字が大きくなるにつれて 性能があがっていきます。

W7500は小規模設計に向いています。W7600~W7700までは中規模設計に適していて、 W7800とW7900は大規模設計に向いています。

認定グラフィックスはおすすめ

3DCADメーカーによっては 「認定グラフィックス」または「認定ハードウェア」と呼ばれるものがあります。

認定グラフィックスとは、 3DCADソフトの動作確認を済ませたグラフィックボードのことを言います。 つまり、「このグラフィックボードならば、この3DCADで問題なく動きますよ」 というお墨付きのことです。

例えば、AutoCADやInventor、Revit、Fusion360、SolidWorks、CATIAは 特定のグラフィックボードやそのグラフィックボードが搭載されたパソコンを 認定ハードウェアとしてユーザーに公開しています。

3DCAD向けパソコン を選ぶときには、 この認定グラフィックスが搭載されているパソコンをおすすめします。

認定グラフィックスがおすすめの理由は、 パソコンを買ってから正常に動かなかったというリスクを 極限にまで減らせるからです。

例えば、パソコンを買ってから正常に3D描画されなかった場合 トラブルシュートにとても時間がかかって 本来の設計の仕事に支障が出る場合もあります。

たいていの場合は、対策方法があります。 そのためパソコンの買い替えはほぼないですが、 トラブルシュートに多大な時間がかかるので 大きな損失になってしまうわけです。

こういう理由からも 認定グラフィックスがおすすめです。

とはいえ、認定グラフィックス、認定ハードウェアがない3DCADも多いです。 認定グラフィックスがない場合は、しっかりとあなたが使う3DCADの 推奨スペックを確認して パソコンを選ぶことが必要です。

ゲーム用グラフィックボードは使える?

NVIDIA、AMDには ゲーム用途向けのグラフィックボードもあります。 具体的にはNVIDIA GeForceシリーズ、AMD Radeonシリーズです。

さて、 ゲーム向けのグラフィックボードは3DCADに適しているのか? というと 「できれば避けたい」というのが私の意見です。

なぜなら、ゲーム用グラフィックボードは 3D描画の正確性よりも3D描画速度を優先させたものだからです。 また、ゲームソフトを対象にドライバーの修正やアップデートが おこなわれているためです。

例えば、 NVIDIAのGeForceドライバーの更新履歴では、 特定のゲームタイトルでの修正内容やアップデート内容が多いです。 ゲームをターゲットにしたグラフィックボードなので、 もし、3DCADで不都合があったとしても、 優先的に修正されるか不安が残ります。

また、GeForce、Radeonは3DCADソフトで認定グラフィックスには指定されていません。

こういうことからも できればゲーム用グラフィックボードは避けたいわけです。

ちなみに、GeForce、Radeonでは3DCADは動かないか? と言われると、そうではありません。 3DCADソフトの推奨スペックを満たしていれば ほぼ確実に正常に動くでしょう。

しかし、私個人的な意見としては、 3DCAD向けのおすすめグラフィックボードを提案する以上は 極力リスクを減らしたいという思いがあります。 そういう観点から ゲーム用グラフィックボードをおすすめしていません。

余談ではありますが、 3DCGソフトではGeForceとRadeonは認定グラフィックスに 指定されているものもあります。

例えば、 3DCGソフトで有名な Mayaのグラフィックボード3dsMaxのグラフィックボード ではGeForceもRadeonも動作確認済みのものがあります。

Blenderも有名な3DCGソフトですが Blenderでの最適なグラフィックボード としてGeForceやRadeonが挙げられることも多々あります。

3DCGソフトは「設計」ではないため精密さよりも 速くキレイに見せることが重要なのです。 これがゲーム用途と似ているわけですね。 そのため 3DCGにおすすめのグラフィックボード としてGeForceとRadeonが挙げられるわけです。

NVIDIAとAMDどちらがいい?

NVIDIAとAMDのグラフィックボードですが、 どちらを選べばいいのか? とても悩みどころだと思います。

私の意見としては、 「NVIDIAでもAMDでも、どちらのグラフィックボードを選んでも問題ない」 です。

NVIDIAもAMDも3DCADメーカーやパソコンメーカーと連携を取りながら、 しっかり正確に不具合なく動くようにサポートされています。

3DCADソフトウェアの推奨スペックに合っていれば あなたの好みで選んでもいいと考えています。

価格が抑えられてコスパの良いAMDが搭載されているパソコンがあれば AMDを選ぶのもいいでしょうし、 3DCADでNVIDIAを使った高速化機能が実装させていれば NVIDIAを選ぶのもいいでしょう。

どのようなパソコンを選ぶべき?

3DCAD向けのグラフィックボードが搭載されているパソコンは かなり限られてきます。

具体的なパソコンの種類としては 「クリエイターパソコン」「ハイエンドのビジネス用パソコン」 「ワークステーション」があります。

ゲーミングPCでは、 3DCAD向けグラフィックボードが搭載されているのは稀です。

NVIDIAのTシリーズはクリエイターパソコン、 ビジネス用パソコン、ワークステーションと 幅広い種類で採用されているものが多いです。

NVIDIAのRTXシリーズは主にワークステーションになります。 ハイエンドのグラフィックボードのため、 それに見合うCPUやメモリが搭載できるワークステーションが選ばれます。

RadeonProは主にワークステーションで採用されています。 NVIDIAと比べるとRadeonProを搭載しているパソコンは非常に少なく 限られたパソコンメーカーでしか買うことができないことがほとんどです。

具体的なパソコンについては、 別のページで詳しくまとめていますので、 よかったらあわせてご覧ください。

厳選!おすすめ3DCADパソコン12選

GPUメモリの目安

グラフィックボードには グレードによってGPUメモリの量が違います。

GPUメモリのスペックは 多くの3D要素をどれだけ高速に表示できるかに関わってきます。 適切なGPUメモリ量がないと快適に操作できないこともあるのです。

例えば、数万の部品を表示するのにGPUメモリが少ないと 3D表示でカクカクした動きになることもあります。

さて、このGPUメモリの目安ですが、 私の経験でいうと 「小規模設計ならGPUメモリ4GB」がいいでしょう。 「中規模設計ならGPUメモリ8GB」がおすすめです。 「大規模設計ならGPUメモリ12GB以上」が必須になります。

小規模設計、中規模設計、大規模設計の例は、 下の図のような感じになります。

設計規模の例

小規模は一軒家を設計する程度で、 中規模はマンションを一棟設計する程度、 大規模は大型商業施設を設計する程度という感じです。

あくまで私の経験から導き出した個人的なスペックなので 参考程度に見ていただけたらと思います。

Quadroとは?

3DCADのグラフィックボードを調べていると 「Quadro」という言葉が出てくると思います。

Quadroとは、 NVIDIAの昔のプロ向けグラフィックボードのブランド名です。 3DCAD向けのグラフィックボードとしても Quadroを使うことが推奨されていました。

いまではNVIDIA RTX Aシリーズ、NVIDIA Tシリーズ、 NVIDIA RTX Adaシリーズに受け継がれています。

「Quadro系グラフィックボード」「Quadroのグラボ」 と呼ばれているものは いまではNVIDA RTX、T、Adaに置き換えても問題ありません。

まとめ

「3DCADパソコンのグラフィックボードの選び方」 についてのまとめです。

3DCADパソコンにはプロフェッショナル向けのグラフィックボードを選ぶ。 CPU内蔵グラフィックスは選ばない。

プロフェッショナル向けのグラフィックボードには、 「NVIDIA RTX Aシリーズ」「NVIDIA RTX Adaシリーズ」 「NVIDA Tシリーズ」 「AMD RadeonPro W6000シリーズ」 「AMD RadeonPro W7000シリーズ」がある。

3DCADソフトウェアには「認定グラフィックス」という動作保証している グラフィックボードがある場合が多い。

ゲーム用グラフィックボードでも3DCADは動くが、 動作保証がないため、できれば避けたい。

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